男女七人夢物語
「あっ!」
「なっ今度は何?」
恥ずかしさを気取られないように顔を反らした矢先、木下が声を上げたので俺の声音も動揺していた。
「大丈夫だ!」
「だから何が」
努めて冷静な声を出そうとして、少し唸るような声になる。
「うちのクラスには加々見学に食われない人たちもいるってこと!加々見学を含め主人公なしの脚本を書けばいいんだよ」
「そうなのか?」
「うん」
目をきらきらさせている木下の頭のなかで今フル回転で物語が展開しているのだろう。
実は悩んでいたのかもしれない。
普段はきっと脚本ではなく小説を書いているだろう木下が、いきなりクラスでやる脚本を書く。
それはとても難しいだろうし、本人も何からどうすればいいか分からなかったんじゃなかろうか。
自然と自分の口角が上がったのが分かった。
学校祭とか生徒会長とかクソくらえだと本気で思ってる。だが、それと同時に、俺は人の役に立ったときの快感も頑張っている誰かを見るのも、やめられない。
面倒くさい人間だと自分でも思う。
親の期待に答えたいから、生徒会を頑張っている。そんなことだったら、まだ言い訳もできたけど、俺は何だかんだ言いつつ、生徒会長の自分を気に入ってしまっているのだ。
本当は、俺にも人には言えない夢がある。
それと、今の生徒会や未来の政治家やってる自分とで天秤にかけたとき、どっちに傾くのかは未だに分からない。
分からないから、迷う。
だから、木下。
お前くらいは、ちゃんと答え出せよ。