男女七人夢物語


それにしても、


「食い殺す、か」


普段そんなこと意識したこともないが、木下が言うならそうなのかと思う。何かの発表の時“お前の前後だけは嫌だ”と、何回も言われた覚えもある。


小学校の学習発表会も然りだ。


「でも、そうだな」


それに負けないくらいの人材が、俺たちのクラスはなぜか揃っている。


みんなの姉御と名高い伊藤一葉や人気者の斎京也と時田陽葵は学年を越えて存在感がある。

そして意外なことに井上奏太も。元天才ピアニストの彼は無口だが中性的な顔していてミステリアスだと一部の女子に人気なのだ。

あと佐山武。甲子園に行く野球部のキャプテンとして、今まさに時の人だ。たまに、取材を受けてるのも見る。


親がそこそこ有名な政治家の息子にして生徒会長の自分もそこそこの存在感はあると自負しているが、彼らは学内ではいずれも劣らない人達だ。


彼らが一つの劇をするとあれば、確かにそれだけでブランド化される。


木下雪乃という全く無名の生徒がどんな面白くない台本を書いたとしても、自分を含めた彼らが出れば失敗する可能性は低い。


「やってみれば?」

「え?」


「加々見学と伊藤一葉、斎京也、時田陽葵、井上奏太、佐山武。このメンバーで木下雪乃の脚本やってみれば?」


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