男女七人夢物語
佐山武



図書室に逃げ込んでいた京也を引きずりながら、仲間の待つ俺はグラウンドを目指した。


目頭が熱いのは気のせいではない。


でも、そんなことは京也には悟られたくなかった。


視線を合わせず、ひたすら前だけ向いて歩き続ける。


「おい、武」

振り返らない。


「聞いてんのか?」

振り返ることなんてできない。


「俺まだユニフォーム着てねーんだわ」


その言葉と共に少し乱暴に腕が振りほどかれた。

俺はため息を我慢して大きく息を吸う。いざ振り返ると、さも痛そうに手を庇うふりをする京也がいた。


「………なんでだよ」

俺の中の何かがプツリとキレる。


「なんで、辞めようとしてんだよっ!」


「なんだよ。いきなり怒んなよ、キャプテン」


視界が霞んではいたけれど、京也があの人好きする笑みを浮かべてるのはちゃんと見なくても分かった。


昔からそうだ。

京也と同じ小学校に俺が転校してきた時から、もうすでに京也はその笑顔でクラスの中心にいた。


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