男女七人夢物語
「………」
「俺は野球がやりたかったわけじゃない。京也と何かしていたかっただけだ」
「おいおい。野郎に告白してどうすんだよ」
そうやっていつも茶化したように対応する京也に、流されてきた。
でも、それはもうやめだ。
「俺は真剣だよ。お前が野球辞めるなら俺も辞める」
「無責任だろ、補欠が辞めるから辞めるなんて。なあ、キャプテン様よ」
「分かってる。俺は無責任だ。だから俺は最初からキャプテンだって京也がやればいいって何度も言った。それに、俺はお前にそうやってキャプテン様って言われるのが死ぬほど嫌いなんだ」
「………バカにしてるわけじゃないさ。お前はキャプテンにふさわしい奴だよ。俺はそこを疑ったことはない。これは俺自身の問題なんだ。お前がどうとかじゃない」
本当にそうなのだろうか。
俺が京也より野球が上手くなっていった時も、確かに京也は笑っていた。高三の今、京也は補欠になってしまったけど、その笑顔は変わらない。
なのに、京也の足はグラウンドから明らかに遠ざかっていった。