男女七人夢物語
「また、そんなこと言ってー」
「だって、陽葵の方が上手いんだもん。ねえ?」
近くにいた女子にそう同意を求めるように言うと、案の定その子も頷いてくる。
モノマネが得意になりたいわけじゃない。
演技が上手くなりたい。
なんて、言えるはずもなく。なんとなく誤魔化した放課後。
けれど、公園にあるジャングルジムの舞台に観客はいない。
私、一人。
「疲れたーっ!」
本当のことを言えば、最近はすこぶる自信がない。
私、時田陽葵は木下雪乃の書く脚本の登場人物には選ばなかった。
木下雪乃は話題性を大切にして有名人を集めたと言っていたが、そこに私は入っていなかったのだ。
これでも知名度は高い方だという自負はあった。
だから噂を知ったとき、自分が全否定されているような気分になった。
そして、一週間後。
木下雪乃が脚本を書き上げたこと、その登場人物が発表された。
主要人物には斎京也、伊藤一葉、井上奏太、加々見学、佐山武。
私の名前はない。