男女七人夢物語
「は…?」
「嫌だったのに、引き受けてくれてありがとう」
「だから、嫌じゃないって」
「うん、でもありがとう」
なんなんだろう。
何しに来たんだろう。
意味が分からなかった。
ついでに、木下雪乃が歪んで見えた。私の目の調子もおかしい。
「ごめん、泣かせるつもりはなかったんだけど」
泣いてない、という言葉はなぜかつっかえて出てこない。今声を出したら、それとともに、目から溢れてきそうでダメだ。
なんで、一番知られたくなかった木下雪乃に、私が感じていたこと全てひっくるめて、ありがとうと言われているんだろう。
私のこと、本当に理解してくれる人なんていないはずなのに。
「あの、それで申し訳ないんだけど、お願いがあって」
「………」
「時田陽葵さん、あなたの舞台私たちに貸してください!」
「………私の舞台?」
「うん。奏太くんに聞いたんだけど、ここで時田陽葵さんが演技してるって。私たち、今まで図書室で練習してたんだけど、それが漏れて図書室で練習しづらくなってたの」
「まあ、それは分からなくもないけど、貸せる舞台なんてないよ」
掠れた声が少し恥ずかしかったけど、そう言い切った。
「あるよ。この公園!」