お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「えっ、あの、ちょっと待って……」
三時間寝れば十分だと言う人が、八時間ベッドにいるということは、五時間はいったい何の時間になるのだろう。
龍一郎のいいたいことはわかるが、さすがに受け入れがたい。
「それはいくらなんでも……死んでしまいます……」
澄花はアワアワなりながら、龍一郎の目から逃れるように、ぎゅっと目をつぶった。
死ぬというのは比喩ではない。今晩、たった一度抱かれただけだが、自分がそういう目にあいそうなことくらいは何となくわかる。
「抱いている最中に、妻に、『死ぬ』と言われるのは本望だな。興奮する」
なのに龍一郎はどこか楽しそうにそんなことを口にした。
「い、いやそういう意味ではなくて!」
「じゃあどういう意味だ」
「いや、そう遠くない意味かもしれないですけど……死ぬって言わせないでほしいと言うか、ああっ、変なこと言ってごまかそうとしないでくださいっ……」
澄花は頰を朱に染めながら、目を開けると、龍一郎の胸に両手を置いた。