お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「――あの」
「ん、キスが欲しいのか。いいだろう。してあげよう」


 からかうように言って、ちゅっと唇の上にキスが落とされる。


「そんなこと言ってな――んんっ……もうっ!」


 澄花がなにかいいかけたタイミングでまたキスで唇がふさがれる。


「怒る君もかわいい」


 クックッと肩を揺らして龍一郎が笑う。


「だが私が君にキスをしたいのは本当だ……君を味わいたい」


 龍一郎の指が、優しく澄花の唇の上をなぞる。


「本当にかわいい……こうやって見て触れるだけで……抑えが効かなくなりそうだ」


 そうやって何度も淡いキスが繰り返された後――次第に唇が触れ合う時間が長くなり、龍一郎の舌が唇を割って入ってきて、完全に澄花は抵抗する言葉を奪われてしまった。


(ねぇ、龍一郎さん……『愛さなくていい』ってどういう意味?)


 本当はずっと、そう尋ねたかったのだ。
 気になってどうしても眠れなかった。

 けれどこの状況で『君の心が欲しいわけじゃない。体だけでいい』と言われると、傷つくような気がして。
 澄花は躊躇してしまった。


(それが彼の望みなら叶えるべき……なんだけど……)


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