お気の毒さま、今日から君は俺の妻
御曹司の秘密
「ああーっ、先輩やっぱりもう会社に来てるっ!」
タカミネコミュニケーションズの総務部で、誰よりも早く出勤して掃除をしている澄花を見つけたのは、珠美だった。
「タマちゃん、おはよう」
澄花はモップを片付けながら、アワアワしながら近づいてくる珠美に微笑みかけた。
季節は四月に変わり、すっかり装いは春である。
澄花は相変らず黒いシフォンブラウスと、黒のパンツで統一しているが、珠美はネイビーのプルオーバーの七分丈のトップスに、レモンイエローのシフォンスカートを合わせ、軽やかでかわいらしかった。
「おはよう、じゃないですよぅ~!」
珠美は持っていたバッグを自分のデスクの椅子にドスンと置いて、腰に手を当てて澄花を見上げる。完全に“怒ってますよ”というポーズだ。
「もうっ、いきなり結婚しますって休み取るのどういうことですかぁ~! そもそもそんな男がいたんですかぁ~!」
「ごめんなさい、その……あれこれと忙しくって……」