お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(なんだか不思議……)


 澄花はしばらくそうやって龍一郎の寝顔を見つめていたが、そっと、彼を起さないように身じろぎして時間を確認する。

 部屋の隅に飾り時計が置いてある。時計の針は午後の二時をさしていた。確か抱き合い始めたのが十時くらいだったから、なんと四時間も経っている。

 四時間ぶっ通しで抱かれ続けていたわけではなかったが、激しかったり、緩やかだったり、吐息だけが漏れ続ける時間だったり、声が枯れそうになったり、とにかく完全に龍一郎のペースで抱かれて続けていたので、あっという間に時間が経っていた。


(お腹もすくはずだわ……)


 朝食はハーブティーを飲んだだけだ。お腹に触れるとぺったんこである。


(なにか食べるものはあるかなぁ……)


 澄花はそっとベッドから抜け出して床に散らばっている下着やワンピースを身につけると、寝室を出て階下へと降りた。



 厨房、配膳室は続き部屋になっていて、食堂は別の部屋になっている。厨房を覗くと、かつて使用人が主人やその家族のために使っていたのだろうという、歴史の面影が残っていた。


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