お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「すてきなキッチン……」
澄花は感動しながら、一枚板のカウンターや配膳テーブルの上を手のひらで撫でる。
アンティーク風というのだろうか。昔ながらのデコラティブな花柄のプリントタイルが貼られている。世間ではわざわざアンティーク風のタイルが売られているが、ここのタイルは古い時代の本物なのかもしれない。
キッチンの隅にはドライハーブを作るラックが吊るされている。庭でハーブを育てているのだろう。
さらになんとなく冷蔵庫を開けると、中にはぎっしりと食材が詰まっていた。肉、加工品、卵、乳製品、野菜と、これだけあれば当分は困らなさそうだ。さらに戸棚を開けると、調味料や乾物のほかに、缶詰やパスタも入っている。
「わ……!」
一気に澄花のテンションがあがった。
刻んだ野菜のコンソメスープと、オイルベースのパスタを作り、パスタの上には生ハムをちぎって乗せる。
「いい匂い……」
ほっこりと澄花は微笑んで、それらをトレイに乗せて階段を登って寝室に戻った。
龍一郎は相変らず眠っていた。窓のカーテンから差し込む光が柔らかい。ゆっくりと上下する龍一郎の肩をあたたかく包み込んでいる。