お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「どんなウエディングドレスなのか気になります~」
「それが私もよくわからないのよね。全部お任せしてるから」
「ええーっ、おまかせって先輩っ、それでいいんですかっ?」
「うん……」


 澄花はこっくりとうなずいた。

 これから行われるのは、あくまでも龍一郎が社外に向けてやる披露宴なので、半分彼の仕事のようなものなのだ。その仕事を手伝っていると思えば、自分が披露宴でああしたいこうしたい、などという気持ちはまったく湧いてこない。

 実際、着るものなんて身内向けの披露宴で着たのと同じウエディングレスでいいと思うのだが、龍一郎の両親、とくに母親が張り切っていて、なにをどう選んでいいかわからない澄花のために、あれやこれやと取り仕切ってくれているのだ。

 それを見て、『本当は澄花さんが自分で決めたいんじゃないのか』と義父は心配してくれるのだが、澄花はとしては、優しい義母があれやこれやと勧めてくれるほうがずっと助かるのだ。


(結婚式は最初の神社でやった白無垢でもう十分だし)


 そこで澄花は白無垢姿の自分を思いだしていた。


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