お気の毒さま、今日から君は俺の妻
四月に入ったばかりでちょうど桜が咲き始め、神社の境内は薄桃色の花びらが舞っていた。静粛な雰囲気の中で粛々と式は進んでいても、澄花の頭の中は、緊張で真っ白だった。
とにかく龍一郎と結婚して、丸山夫妻を助けてもらわなければならない。春樹との思い出を失うわけにはいかない。そのことしか頭になかった。
なにかミスを犯して龍一郎の気持ちが変わったらどうしようと、そんなことばかり思っていた。
なので隣で龍一郎がどんな顔をしていたのか、ほとんど覚えていない。
少し余裕が出てきたのは、ホテルでの披露宴が終わってからだ。
(龍一郎さんがどんな和装をしていたのかも覚えてないわ……)
そのことを思うと少し残念な気持ちがあるが、今となっては、早く半分仕事のための結婚式が終わって、龍一郎が休めるようになってほしいと思うばかりだ。
「でも先輩っ、もう普通に新婚さんですもんね~。どうですかっ、甘々らぶらぶしてますかっ?」
珠美が面白そうに箒にもたれながら、首をかしげ、顔を覗き込んでくる。
「甘々ラブラブ……って」