お気の毒さま、今日から君は俺の妻
新婚と言われればそうなのだが、やはり少し恥ずかしい。
照れ隠しもあって、首を振った。
「普通だよ」
「ええーっ、普通ってわかんなぁいっ!」
「だから普通は普通なの。ほらタマちゃん、もうすぐ部長も来るわよ、手を動かしましょう、掃除掃除っ!」
澄花はあれこれと聞きたがる珠美の背中を押して、わざとらしくモップを動かし、床を拭いて回る。
澄花はこの一か月の間、なにごともなく毎日出勤し、帰宅後は龍一郎のために料理を作り、一緒のベッドで眠り、休みが合えば少しの時間でもふたりで過ごしたりと、忙しくはあるが、びっくりするほどおだやかな日々を送っている。
結婚する直前も直後も、不安要素ばかり考えて悩んでいたのだが、今となってはなにもかも杞憂だったのではないかと思ってしまう。
(私、このところ龍一郎さんのことばかり考えてる……)
この気持ちの変化を、どうとらえていいのか、自分でもまだ決着がついていない。
龍一郎がなにも求めないのをいいことに、ただひたすら一方的に与えられる、甘やかな溺愛に浸っている。
(よくないわよね、こういうの……)
だがはっきりと決着がつかない。ぐるぐると振り子のように揺れる気持ちを澄花は認めながらも、まだ答えは出せそうになかった。