お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 仕事を終え急いで帰宅した澄花は、軽くシャワーを浴びた。

 今晩は龍一郎に誘われて、恵比寿で食事をすることになっている。今もっとも人気があり、なかなか予約がとれないフレンチの名店で、三ツ星なのだとか。
 レストランの予約は九時なので、彼が迎えに来るまでに支度をしておかなければならない。


(龍一郎さんはどんな装いが好きなんだろう?)


 ノースリーブのワンピースに着替えて、ふと考える。

 正直言って、龍一郎は澄花がなにを着ても、どんな格好をしても、『きれいだ、美しい』と絶賛するばかりでよくわからない。もしかしたら無頓着で、ただ単に澄花をほめてあげたいと思ってくれているだけなのかもしれない。

 何しろ澄花の黒ばかりのクローゼットを見ても、彼は何も言わないくらいなのだから。


「シンプルでいいか……」


 ブローしてサラサラになった長い髪をを後ろでひとつにまとめた。アクセサリーをどうしようか迷ったが、なにひとつつけないのもそっけないので、母の形見であるパールのピアスをつけることにした。


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