お気の毒さま、今日から君は俺の妻
部屋のドレッサーの上に置いてある、昔から使っている古い宝石箱を開ける。
それは木目の美しい二段仕様のジュエリーボックスで、かつては澄花の祖母のものだった。祖母、母、澄花と三代にわたって使っている。とくに模様があるわけではないが、表面には光沢があり、手触りも滑らかで美しい。澄花の大事なジュエリーボックスだった。
蓋を開けてパールのピアスを手に取り、つける。
鏡を見てほんの少し、にっこりと笑うと、ピアスが黒いワンピースに映えて美しかった。
(龍一郎さん、嫌いじゃないかな? ううん、きれいだと言ってくれる気がする……)
アクセサリーを選んでつけるのは久しぶりだった。
本当にきれいかどうかはこの場合二の次だ。
洋服を買わないので、相変わらず黒い服ばかりだが、アクセサリー一つでも、誰かのために装うというのは、なかなかに楽しい作業だった。
さて、時計はどうしようかとドレッサーの引き出しを開ける。
そこでふと、引き出しの奥にひっそりとしまわれていた、写真立ての存在に気が付いた。