お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「あ……」
澄花は息を飲む。
それは長い間、澄花の部屋に飾られていた春樹の写真だった。
引っ越しに際して持ってきたのはいいが、どこかに飾るわけにもいかず、ドレッサーの引き出しの奥に隠していたのだ。
「ハルちゃん……」
澄花は写真を手に取って、じっと春樹の顔を見つめた。
写真の中の春樹は相変らず笑っていた。
澄花はこの七年近く、この写真の春樹に向かって、おはよう、いってきます、ただいま、おやすみと声を掛け続けていたのだ。
友達も必要としておらず、なにかあれば相談するのも、この写真の中の春樹だった。
そうやって澄花の日常の中に春樹は生きていた。
これから先もずっと、そうして生きていくつもりだった。
「私……」
澄花は微かに唇を嚙む。
自分を買ってくれと龍一郎に言った時から、春樹に対して申し訳ないという気持ちを極力抱かないようにしてきた。