お気の毒さま、今日から君は俺の妻
そして部屋の中でピアスを探していたらしい給仕を呼び戻すと、ビニール袋に氷を詰めて持ってくるようにてきぱきと指示する。さすが一流レストランの給仕というべきか、彼らは一瞬たりとも騒ぐことなく、静かにうなずいて、氷を持ってきてくれた。
「――折れてはないと思うけど。ねんざかな」
天宮が椅子に座ったままの澄花を見下ろして、うなる。
「腫れてきたね……」
「はい……でも、氷で冷やしてるとだいぶ楽です……」
「そっか。よかった」
そこでふうっと、天宮はため息をついた。
「あ……」
澄花はそのため息に、彼を巻き込んでしまったことに気が付いて、急に恥ずかしくなった。
「あ、あの……すみません……」
「えっ、なにが?」
「変なことに……巻き込んでしまって」
気の置けない友人たちとの楽しい食事の結末が、これである。
申し訳なさすぎて、いてもたってもいられなくなってしまった澄花は、立ち上がって深々と頭を下げた。