お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 もしかして彼が日常的に暴力をふるう男だと思われているのではないか。だとしたらそれは澄花の望むところではない。


「こんなこと、初めてなんです……」


 澄花は言い訳のように声を絞り出した。

 頭が冷静になると、ズキン、ズキンと響くような痛みが気になったが、それ以上に胸が痛かった。


(触らないでなんて、言う気はなかったのに。しかも大嫌いだなんて……まるで子供みたいだった……)


 澄花が龍一郎に対して怒りをおぼえたのは、自分が大事にしているピアスをまるで小石のように言われ、探す時間を奪われそうになったことであって、腕のせいではない。

 普段の彼は澄花を真綿で包み込むように大事にしてくれている。龍一郎に澄花の腕をねん挫させるつもりがあるはずがない。だからこれは事故だと澄花は思っている。

 だが天宮はその言葉を苦々しく受け止めている。ただの事故だとは思っていない。


「そっか」


 どこか困ったように笑う天宮を見て、澄花はうなだれた。


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