お気の毒さま、今日から君は俺の妻
その後すぐ、澄花のもとに運転手がやってきた。いつも龍一郎の車の運転をしている六十代後半の男性で、名前を古河(ふるかわ)という。
「奥様、龍一郎様から聞きまして、病院の手はずを整えました。参りましょう」
龍一郎が姿を消していたのは彼を呼んでいたのだろうか。置いていかれたわけではないとわかるとホッとした。
「はい……」
澄花はうなずいて立ち上がった。
「天宮さん、ありがとうございました」
「ううん、気にしないで。ピアスのことはちゃんと伝えておくからね。大丈夫、絶対に出てくるよ」
「ありがとうございます……」
頭を下げる澄花に天宮はにこりと笑って、そのまま部屋を出ていった。
(本当に天宮さんには申し訳なかったな……菓子折りでも持っていくべきかしら……)
澄花はそんなことを思いながら、古河と一緒に階段を降りていく。