お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 いったいどれほど時間が経ったのかーー。
 かすかに衣擦れの音がする。

 ウトウトと、ドレッサーにうつぶせになるようにして眠る澄花の横に誰かが立っていて、触れているのかいないのか、わからないくらいそっと頭を撫でている。


「澄花……」


 大きな手が澄花の後頭部を撫でたあと、まとめた髪をほどいて、指ですく。
 さらさらと澄花の黒髪が背中を覆うように広がっていく。

 それから膝裏と背中を支えた手に力がこもり、澄花の体がふわりと浮いた。
 ゆらゆらと足が揺れる。

 その浮遊感と安心感は、澄花の幼い頃――実の父との数少ない思い出を連想させて、澄花はなぜか無性に泣きたい気分になった。

 体がゆっくりとベッドに横たえられる。


(もう少し抱っこされていたかったな……)


 子供のようにそんなことを思っていると、今度は額に手がのせられた。


「君を傷つけるつもりはなかった……すまない……謝って許されるわけではないが……本当に申し訳ない」

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