お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(キス……?)


 そう、キスというにはかなりがむしゃらで――。
 まるで懇願のようなキスだった。


「――愛しているだけなら、罪にはならないと思った……君に愛されようなどと不届きなことを思わなければ、結婚さえすれば、このまま君を、俺の物にできると……思ったんだ」


 その稚拙なキスに言葉に、なんだか心臓をギュッとつかまれているような気がして、苦しくなる。


「俺は君を愛している。誰もよりも、世界中の何よりも、愛している……ただの親切な男と話しているだけでも、火をつけられたように嫉妬してしまうくらい……君が好きで、苦しくて……どうしようもない……」


 その声は身を切るような切なさがあって。
 確かに怪我をしたのは、傷つけられたのは自分だったはずなのに、龍一郎のほうがずっと傷ついて、泣いているような気がした。

 その瞬間、澄花は唇を震わせ、彼の名前を呼んでいた。


(りゅ……いちろ、さん……!)


 けれど唇はわななくばかりで、声は出ない。

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