お気の毒さま、今日から君は俺の妻
レストランに行く前、ジュエリーボックスに、春樹の写真を入れたばかりだった。
――パタン、とジュエリーボックスが閉じる音が響く。
なにを言うでもない。龍一郎は無言だった。
そして彼はそのまま澄花の部屋を出て行く。
ゆっくりと、澄花を起さないように注意深くドアを閉めて――。
何も見えないはずなのに、澄花のまぶたの裏には、ひどく気落ちして肩を落とし部屋を出て行く龍一郎の姿が映っていた。
(龍一郎さんに……見られた)
横たわっているだけなのに、めまいがした。
まるで体が宇宙に放り出されたように、グルグルと目が回る。
(見られてしまった……ハルちゃんの写真を……)
この七年間、澄花がずっと心の支えにしてきた春樹の写真。あれを龍一郎が見たらどう思うだろう。
いや、どう思うもなにも、『嫌い』と言われたにも関わらず、それでも眠る澄花に愛していると告げる龍一郎にとって、辛いことでしかないはずだ。