お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 ズキン、と胸がきしんだ。


(龍一郎さん……待って……私……)


 気持ちが焦って、体が動かない。
 結局、相変わらず澄花は目を覚ますことが出来ず――きっと疲れすぎていたのだろう。
 そのままゆっくりと意識を手放してしまったのだった。




 目を覚ますと、朝の六時だった。澄花はゆっくりとベッドで体を起こす。
 靴はベッドの下にあり、ワンピースは椅子の背もたれに掛けられていた。
 左耳にふれると、そこにピアスはない。


(夢であってほしい……)


 そんなことを思いながらベッドから降りてドレッサーに向かい、ジュエリーボックスの蓋を開ける。

 ピアスも写真もそこにあった。
 七年間変わらない春樹の優しい笑顔と、ひとつだけのパールが、澄花の心を貫いた。

 自分の行為は裏切りだった。
 誰に? 決まっている。

 春樹と、龍一郎。
 ふたりの男性への、裏切りだったのだ。

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