お気の毒さま、今日から君は俺の妻
春樹を毎日思っている、決して忘れないという心の誓いを忘れ、一方で龍一郎にも不確かな思いを抱えて、ふたりの男性の間を振り子のように揺れていた。
春樹への気持ちをどう整理するのか、考えなければならなかったのに。
そしてなにより、龍一郎が自分を知っていたこと。
丸山夫妻を助けてくれたこと。
最初から気になっていたはずなのに、自分だって彼に隠しているの事があるのだから、無理に聞き出すのは止めよう、もう少し時間が必要だと先送りにしていた。
だが先送りにしたところで言い出せなくなる可能性のほうがずっと、高かったのだ。
どれだけ言いづらいことでも、本当は最初にきちんと話し合うべきだったのだ。
「――今後はご神徳のもと、相和し、相敬い、苦楽を共にし、明るく温かい生活を営み、子孫繁栄のために勤め、終生変わらぬことをお誓いいたします。なにとぞ、幾久しくご守護下さいますようお願い申し上げます」
白無垢姿の澄花の隣で、誓詞奏上を読み上げた龍一郎の、低い声を思いだす。