お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「龍一郎さんっ……」
澄花は泣きたくなるのをこらえながら、一階、二階、すべての部屋をひとつひとつ確認していく。
だが、葛城邸のどの部屋を見ても龍一郎の姿はない。
昨晩帰って来た時とまるで変わらない、静かな空気に、澄花は呆然となった。
「昨日のあれが……夢?」
だがあの熱っぽい囁きが、あたたかい手が、キスが、懇願が、告白が、自分が都合よく見た夢だとはとても信じられない。
澄花はどうしていいかわからないまま、澄花は階段の下のほうで座り込んだ。
「はぁ……」
ため息をつきつつ膝を抱える。
「そんなはずない……あれは現実だったわ……!」
思わずそうつぶやいていた。
確かに龍一郎はドレッサーにもたれるようにして眠っていた澄花を抱き上げベッドに運び、パンプスとワンピースを脱がせ、ピアスを外した。
たったひと月程度とはいえ、澄花は龍一郎に真綿でくるまれるように愛されたのだ。彼のぬくもりを今さら間違えるはずがない。