お気の毒さま、今日から君は俺の妻
彼のキズ
「なんだか先輩……今日はいつにもましてやる気まんまんのびしばしモードでしたねっ?」
「そうかなぁ……まぁ、ちょっと確かに集中してたかもしれないけど」
昼休み、珠美と連れ立ってシブヤデジタルビルを出た澄花は、目新しい店はないかと、あたりをうろうろしていた。
(実際は、龍一郎さんのことを考えないで済むように、仕事に集中していただけなんだけどね……)
仕事に行く前、澄花は龍一郎の携帯に連絡を入れている。ただ呼び出し音がなるだけで応答がなかったので、あきらめてそのままだが、彼が今どこでなにをしているのかは、ずっと気になっていた。
(私の顔が見たくないならそれは仕方ないけれど……私にそんな権利はないかもしれないけれど、心配だな……)
一瞬暗い表情になった澄花だが、今は珠美もいる。
気落ちすればすぐに気づかれてしまうだろう。何ごともなかったかのように、隣を歩く珠美の顔を覗き込んだ。
「それよりタマちゃん、なに食べたいか決めた?」
食欲はあまりなかったが、職場にこもっていても気がめいりそうなので、澄花は珠美に誘われるがままついてきたのだ。