お気の毒さま、今日から君は俺の妻
天気はいいし、空は青い。道行く人もだいぶ薄着になってきている。梅雨はまだあけておらず、澄花は相変わらず黒のブラウスとタイトスカートだが、すぐそこに夏の訪れを感じていた。
「てゆーか、今日のランチはがっつりいきたいんですよねぇ~。パスタって気分でもないし、ましてやサラダって気分でもないんですよ」
「がっつりねぇ……」
そうは言っても、澄花もあまりがっつり食べられるような店に詳しくない。
「営業部の男子にでも聞いてくればよかったわね」
営業部に多い体育会系男子ならその辺は詳しそうである。
まぁ、ただの思い付きなので、あくまでもさらっと口にしただけなのだが。
「――体育会系男子」
珠美は澄花の言葉を復唱して、立ち止まった。
「タマちゃん?」
いったいどうしたのだろう。忘れ物でもしたのだろうかと、澄花も一緒に立ち止まったところで、珠美はすっと前の方を指さした。
「先輩……あれ、見えます?」
「え?」