お気の毒さま、今日から君は俺の妻
そしてその気持ちは、ずっと前から持っていたはずなのに、あくまでも澄花は『自分が彼を好きになっているから』と思わずに、『契約結婚なのだから、自分にも彼を大事にする責任がある。周りの人に対する責任もある』と、もっともらしい理由をつけて自分に言い聞かせ――言ってしまえば【かっこつけていた】のだ。
(私ったら……本当に……子供みたい……恥ずかしすぎる……)
だがここで素直にならなければ、龍一郎に気持ちをわかってもらうことなど出来るはずがない。
(言うんだ、澄花……!)
澄花は持っている勇気を総動員して、龍一郎を見上げる。そしてすうっと息を飲み、口を開く。
「私、あなたのことを……」
その瞬間、
「いや、違う。澄花、それは違うんだ」
龍一郎がすっと、澄花の唇の上に指を乗せた。
(違うって……どういうこと?)
告白を止められた澄花は、びっくりして思考が停止しかけたのだが――。
(ああ、そうだった。まずハルちゃんのことを話さないと……!)
いきなり澄花に告白されたとしても、龍一郎だって、はいそうですかと受け入れられるはずがない。