お気の毒さま、今日から君は俺の妻
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彼女――栫澄花に初めて出会ったのは、七年前の冬の日――友人の葬式の場だった。
タクシーから降りたばかりの俺の吐く息は真っ白で、頬に触れる空気は痛いくらい冷たかった。年が明けてから十日も経っておらず、天気予報では雪が降ると報じられていた。
当時パリで働いていた俺のもとに、実家から突然の訃報の連絡があった。
亡くなったのは高校時代の同級生の一人だ。俺と同い年――当時二十七歳で、健康優良児を絵にかいたような、快活な男だった。
それほど親しかったわけではなかったが、高校生の頃俺は生徒会長を務めていて、バスケ部の主将だった彼とは何度か言葉を交わしたことがあった。
確か部活の活動時間についてだったと思う。
朝練の時間を増やしたいとやってきた彼と、それを受け入れられない学校との橋渡しをしてほしいと頼まれて、受けたことがあった。
結果、彼の熱意が周囲を動かし、朝練の時間は延長され、俺はひどく感謝された。
彼の作る資料を手直ししたくらいであそこまで感謝されるいわれはなかったが、その後卒業しても、彼から年賀状が毎年届いていた。
そう、その程度の付き合いだったのだ。