お気の毒さま、今日から君は俺の妻

　派手な美人というよりも、物静かで凛とした姿勢の美しい人だった。その雰囲気のせいで弔問客の目をひいていたが、彼女には他人に話しかけられるのを拒む、明確な空気があった。気安く触れようとするならば、その指がすぱりと切れるのではないかという鋭さを持っていた。

　その雰囲気から最初は怒っているのかと思った。
　近寄りがたさを感じ、ただ俺も眺めていることしかできなかった。




　彼女が泣くのを我慢していたのだと気づいたのは、葬式が終わってからだ。
　急に振り出した淡い雪の中、どこかで煙草が吸えないかとうろうろしていた俺は、受付を離れた寺の敷地の隅っこで、彼女を発見した。

　そこで彼女は泣いていた。


「ううっ……ひっくっ……」


　それまでの凛とした雰囲気には少し不似合いの、子供のような泣き方だった。

　それまで彼女は誰も必要としていなかった。椿の花びらのような、凛と美しい赤い唇をかみしめながら、真っ白な手を身体の前で握りしめ、安易なお悔やみの言葉をかける他人を、はなから拒絶していたというのに。