お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「ハルちゃんっ……ハルちゃんっ……」


 ひとりになった瞬間、あんなふうに泣くのかと、ショックを受けた。


「どうして死んじゃったの……ハルちゃんっ……ひどいよっ……うわぁぁーっ……!」


 まるで悲鳴のように叫び、体を丸めて、雪の中にうずくまっていた。

 周囲には誰もいない。だから彼女は自分の殻を脱ぎ捨て、ああやって素直に泣けるのだ。

 俺は煙草に火をつけるのも忘れて、ただ彼女に見とれていた。

 頬や鼻の頭を真っ赤にして泣く彼女を見て、不謹慎にも、俺は生まれて初めて、他人を美しいと思った。凍えるような寒さの中で、雪を積もらせて泣いている彼女の背中を、抱きしめたいと思った。あの肩を抱いて、背中を撫でてやりたいと思った。

 たとえ彼女が他人を拒絶する、刃物のような気配に切り刻まれたとしても、『もう泣かなくていいよ』と抱きしめて、額にキスをして、涙を止めてやりたかった。

 一方的な激情だった。

 彼女を手に入れられるのなら、どんな目にあってもいい。殺されたっていい。
 あの美しい彼女が、欲しくて欲しくて、たまらなくなった。

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