お気の毒さま、今日から君は俺の妻
こんなふうに他人に執着したのは初めてだった。
どこかに攫って閉じ込めておきたいと思っても、たかが妄想でしかないのに彼女に嫌われたらと思うと怖くなる。実際、彼女はまだ高校生で、未成年なのだ。いくら欲しいと思っても、どうすることもできない。
生まれてからこの方ずっと、人との付き合い方を学ばなかった俺には、彼女は高嶺の花だった。
そして結局、俺はどうすることもできなかった。
パリにすぐに戻らないといけなかったし、当分日本に帰れる予定もなかった。
諦めるしかない、あれは夢や幻のようなものだったのだと自分にいい聞かせ、後ろ髪を引かれながら日本を離れたのだ。
そして時がたち七年後。俺は栫澄花を手に入れる機会を得た。
副社長就任パーティーに彼女がいた意味がわからなかったが――偶然再会した彼女に想いが再燃した俺は、すぐに彼女のことを興信所に調べさせた。
彼女が丸山春樹ひとりを相変わらず愛していることも、そのために黒い服しか着ていないことも、男ひとり近づけていないことも――全部、調べあげた。
そして実の親のように慕っている丸山夫妻の事業が立ちいかなくなっていることも、全部。