お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「すまなかった……」
再度、龍一郎は謝罪の言葉を口にした。
(すまなかったって……どうして謝ってばかりなの……?)
澄花は唇をかみしめながら龍一郎を見下ろす。
「龍一郎さん、謝らないで……結局私たち、お互い様ということではないの?」
「澄花……」
そうだ。お互い大事なことをずっと黙っていた龍一郎と、澄花は、ある意味似た者同士なのではないか。
だったらこうやってお互いの隠し事を明らかにした以上、またイチからスタートすればいいだけなのではないか。
澄花はそう思ったのだが――。
チクタク……。
客室の中で時計の針が進む音がする。壁の調度品の上に置かれた、美しい年代物らしい置時計が沈黙を刻んでいく。
「龍一郎さん……」
澄花が再度焦れたように彼の名前を呼ぶと、龍一郎はゆっくりと顔を上げた。
「家まで送らせよう」