お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「え?」


 なぜここまできてそんなことを言うのか。信じられず息を飲む澄花だが、ひざまずいていた龍一郎はゆっくりと立ち上がり、澄花の手を引いて部屋を出る。
 まるで問答無用で、ここから追い出そうとしているように感じた。


(いったいここになにがあるの!?)


 澄花の胸が痛いくらいざわつく。


「待って、龍一郎さんは帰らないの?」
「澄花……」


 どこか困ったように龍一郎は、軽く振り返って首を振った。


「さっきも言っただろう。それはできないと」
「でも、その理由は聞いてないわ」


 澄花はまるで駄々っ子のように首を振り、つかまれていた手を振りほどく。

 自分でも往生際が悪いと思うが、さすがにここまで来て引き下がれるはずがない。


「もう隠し事はやめて!」


 そしてそのまま、龍一郎の体に飛びつくようにして抱き着く。


「一緒に帰るって言うまで、あきらめないから!」


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