お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「実は子供のための乗馬教室の手伝いをしているんですが、女性陣の都合が悪くなってしまって。なにしろ子供が十人もいるのに、お昼の準備もままならなくて困っていたんです。篠崎さんから、葛城さんが来てると聞いたので、追いかけてきました。突然のことで申し訳ないのですが、手伝ってもらえないでしょうか」
「そんなことでしたら喜んで」


 いったいなにを助けなければならないのかと、少しだけ緊張していた澄花だが、不二基の「子どものための食事」という申し出を断る理由はない。

 ということで、澄花はまたレオにまたがって、倶楽部に戻ることにした。



 倶楽部までの道すがらお互い、軽く自己紹介をする。

 灰色の目をした彼は、改めて澄花に「不二基(ふじもとい)と申します」と丁寧に名乗ってくれた。年は二十九歳になったばかりだという。

 彼の両親と篠崎夫婦が友人同士で、この倶楽部でも子供の頃から世話になっているらしい。


「サンドイッチの予定だったので、食材はすでに用意しているんですが、なにしろ私は包丁も持ったことがなくて。お恥ずかしい限りです」


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