お気の毒さま、今日から君は俺の妻
そう言って基は、さわやかに微笑む。
ただほんの少し笑顔になっただけなのだが、キラキラした幻覚が見えそうだ。
着なれた雰囲気のコットンのシャツにデニムとブーツを合わせているだけのシンプルなスタイルなのだが、龍一郎とそうかわらない長身でまるでモデルのように着こなしている。
「サンドイッチなら……私でもなんとかなりそうです」
華やかなのにどこか愛嬌がある雰囲気は、神様が丹精込めてつくった造形としかいいようがなく、澄花は『龍一郎さん以外にも一般人にこんな美男子っているんだなぁ……』とのんきに思いながら、こくりとうなずいた。
そして馬をスタッフに預けて、そのまま肩を並べてクラブハウスへと向かう。
たまに軽食も出しているので、クラブハウスのキッチンは業務用だ。広いステンレスの作業台の上には、薄く切られたパンや卵、ハム、肉の塊、トマトやレタス、玉ねぎなどの野菜が、所狭しと積んであった。
篠崎もやってきて、「うちの家内もたまたまいなくて。すまないね」と申し訳なさそうだったが、澄花は「私でよければ」と首を振る。