お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「――葛城龍一郎といいます」


 そして胸元から名刺入れを取り出し、一枚澄花に差し出してきた。


「わざわざありがとうございます」


 残念ながら澄花には差し出すような名刺はない。とりあえず名前を名乗ることにした。


「栫澄花(かこいすみか)です」
「知っている」
「え?」


(知ってるって、どういうこと?)


 目を丸くした澄花を、葛城は冷ややかに見下ろした。


(感情がないような……そんなはずはないけれど、とても冷たい目だわ……いったいなにを考えているんだろう)


 だが結局なにを言うでもなく、そのまま目を逸らし、「着替えが届けられる間にシャワーを浴びなさい」と言い、くるりと澄花に背中を向ける。

 その背中はそれ以上の問いを拒む意思が感じられ、澄花はなにも問いかけることはできなかった。


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