お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 内側からバスルームのドアを閉め、澄花は「ふう……」とため息をついた。


(KATSURAGIの御曹司のためのスイートルームでシャワーを浴びる……? どうしてこんなのことになってしまったんだろう……)


 まったく意味が分からない。

 澄花は今日、何度目かのため息をはきながら中を見回す。

 海外の高級ブランドのアメニティがずらりと並ぶバスルームは、かなり広かった。手前にドレッサー、そしてシャワーがあり、目隠しらしい幾何学模様が施されたガラスの衝立の向こうにジャグジーがあった。
 澄花が住む部屋より広いのではないだろうか。美しい乳白色のタイルの床はピカピカに磨き上げられ、髪の毛一本落ちていないし、備え付けられている鏡も大きく見やすい。


「すごい……」


 あまりにも美しいバスルームに、澄花は洋服を着たまま空のバスタブの中に足を踏み入れ、カーテンをほんの少しだけ開けて外を覗いた。そこには部屋と同じ美しい夜景が広がっている。カーテンを開ければ、展望ジャグジーとして楽しめるようにになっている。

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