お気の毒さま、今日から君は俺の妻
式を終えたあと、控室で俺たちはふたりきりになった。とはいえ、披露宴はこのあと、二時間後の午後一時から、すぐ近くの老舗ホテルで執り行われるので、すぐにタクシーで移動だ。
「――澄花」
俺が名前を呼ぶと、畳の上に置かれた小さな椅子に腰かけていた彼女は顔を上げる。
「今日から君は俺の妻だ」
すると彼女は、まじめな表情で俺を見据える。
「約束、守ってもらえますよね」
「ああ。それ相応の対価は払う。約束は守る。お気の毒としか言いようがないが……契約は契約だ」
俺の言葉を聞いて、彼女は神妙な面持ちでうなずいた。
「それなら安心しました。どうぞよろしくお願いいたします」
彼女はそっと椅子から降りると、畳の上に手をついて、深々と頭を下げる。
大安吉日の今日。
俺は愛されたいとまったく考えていない彼女と夫婦になった。