お気の毒さま、今日から君は俺の妻
澄花は不幸にも家族を失ったけれど、あたらしい家族を得た。優しいおじさんとおばさん、そして春樹と、ずっと一緒にいられると思っていた。
けれど春樹は七年前の冬、インフルエンザをこじらせて倒れ一週間入院した後、亡くなってしまった。
菌が脳にまわったのが死因と聞いたが、とても信じられなかった。なにもかもが突然で、あっけなく、澄花の恋、そして幸せな人生は終わってしまった。
十七歳になったばかりの澄花の、最初で最後の恋だった。
周囲の人間は澄花が後を追うのではないかと心配していたが、死んで春樹に会えるならまだしも、その確証がないのならまだ彼が生きていたこの世界で生きていたほうがずっとマシだった。
少なくとも自分が春樹のことを思ってさえいれば、彼はこの世界に存在する。
(死ぬまでハルちゃんのことを思っていられたらいい……)
澄花の喪服は、かつての幸せの影だった。
(あの、毎日が幸せで満たされていた、あの日々があったからこその、強い影……)