お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「水を飲んだ方がいい」


 龍一郎は持っていたミネラルウォーターを澄花の前に置く。


「あ……ありがとうございます」


 確かに長湯をして喉が渇いていたので、水はありがたい。気まずい思いをしながらも、ペットボトルを手に取った。


(ん……あれ……?)


 外国産らしいおしゃれなブルーのペットボトルだったが、蓋が開かない。


(どうして開かないの……っ……!)


 澄花が無言で手に力を込めると同時に、

「貸してみなさい」

 と、ペットボトルがひょいと奪われる。


「あ」


 目の前に立っていた龍一郎が軽々とペットボトルの蓋をひねると、いとも簡単に開いてしまった。


「――すみません」


 それを受け取ろうと立ち上がった瞬間、ふらりと目眩がした。


「……っ」


 ぐらりと視界が傾く。

< 42 / 323 >

この作品をシェア

pagetop