お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(私ったらすっかり忘れてた……!)


 何度も掛けたのかもしれない。スマホの向こうで、彼女が不服そうに唇を尖らせている姿が目に浮かぶ。
 一時間近く姿が見えなかったのだから、さぞかし心配させたに違いなかった。


「ごっ、ごめんなさい、すぐにそっちに行くから! ごめんなさいっ!」


 澄花は珍しく大慌てしながら、平謝りする。


【えーっ、大丈夫なんです?】
「うん、大丈夫だから! とりあえず後で話すから、ロビーで待っていて!」


 気にはなるが、これ以上いつ戻るかわからない龍一郎を待っている訳にもいかない。

 澄花はバッグをつかむとそのまま龍一郎の部屋を飛び出していた。



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