お気の毒さま、今日から君は俺の妻
ホテルの一階ロビーに降りると、珠美が柱にもたれるようにして立っていた。
やはりかなり膨れている。叱られるかもしれないが餅のようだと思った。
「ごめん、ごめんなさいっ!」
澄花は必死に謝罪しながら珠美を連れて、ホテルを出る。
そして乗り込んだ帰り道のタクシーの中で、珠美がトイレに行った後、事故でビールをかけられてしまったこと、そしてホテルの好意でシャワーを浴びせてもらったことなどをざっくりと説明する。それを聞いて、珠美は驚いたように目を丸くした。
「あ、そういえばクマみたいに大きな男の人いました! でもホテルも太っ腹ですよね~着替えまで用意してくれるなんてっ」
「正確にはKATSURAGIが太っ腹なのよ」
「あ、そうでしたえへへ~」
珠美が恥ずかしそうに頭の後ろを撫でる。
「まぁ、その上等な服は貰っておけばいいんですよ~。別に返せなんて言わないでしょ。それに私たちのことなんてどこの誰だか知らないんですから」