お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「おじさんはね、ちょっとお仕事に行ってるのよ。今日は帰りが遅いみたい」


 澄花の質問を受けて、尚美は少し困ったように笑い、「先にお夕食を食べましょうよ」と、キッチンへと向かった。


「そうなんだ……」


 春樹の実家は、小さな町工場を経営している。春樹は大学を卒業後、跡を継ぐつもりだったのだが、この不況で電子機器の部品を作る下請けでしかない工場を継がせるのは忍びないと、俊樹はそれを突っぱね、春樹は自動車メーカーの営業として働いていたのだった。


(大丈夫かな……)


 気にはなりながらもうまい言葉が出てこない澄花は、

「お台所手伝うね」

 と、誤魔化すように笑顔を作り、尚美の背中を追いかけた。



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