お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「ねぇ、おばさん。なにか困ってることがあるの?」
「えっ……?」
澄花の言葉に尚美は驚いたように目を丸くした。
「――いやだ、澄花ちゃん、べつになにもないわよ」
だがそういう尚美の顔は浮かない表情で、とてもなにもないとはとても見えない。それに食事の間も、何度か壁の時計を気にしていたことに澄花は気づいていた。
(おじさんになにかあったのかもしれない……)
「おばさん、隠さないで」
澄花はそっと手を伸ばし、尚美の手を取った。菜箸を置かせ、ふたりで並んでダイニングのテーブルに座る。
親友夫婦の娘というだけで、澄花を実の子供同然に見守ってくれた彼らには澄花も大きな恩を感じている。それに春樹は常々両親の町工場の心配をしていたし、十人程度ではあるが従業員のことを気にかけていたことを、澄花は知っている。
「不安なことがあるなら、話してほしい。私も……この家の家族でしょ……?」
澄花の言葉に、尚美の顔が泣き出しそうに歪んだ。