お気の毒さま、今日から君は俺の妻
呆然とする澄花だが、このまま黙って車に乗っているわけにもいかない。
「あの、葛城さん、私の家、すぐそこだったんです」
「知っている」
前を向いたまま、そう答える龍一郎の横顔は、見惚れるほど美しかった。
「はい?」
(だからどうしてこの人の返事は『知っている』なの!?)
若干憮然としながら、澄花は大きな目をまん丸に見開いた。
外国の血が入っているのだろうか。鼻梁は細く高く、唇とあごのバランスは、日本人離れしている。よくよく見れば、瞳は深い海の底のような群青色だ。黒のストライプのスーツ姿は、長い足を組むだけでさまになる。まるで海外のファッションブランドのポスターのようだ。
だが彼は絵の中の人ではなく、今、現実に自分の隣に座っている。
「あの、先日もそう言われてましたけど……どうし……いたっ」
「――どうした」
途中で痛みに言葉を詰まらせた澄花に、龍一郎が視線を向けた。
「いえ……」