お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 澄花は目を伏せ、両手のひらを上に向ける。手のひらには擦り傷がたくさん出来ていて、赤く血がにじんでいた。


「さっき転んだ時に……ちょっと」


 うつむいたまま答えた澄花だが、

「ひゃっ……!?」

 驚いて叫んでいた。

 なんと手のひらに触れるくらい近く、龍一郎が顔を近づけていた。

 背が高く、肩幅もある龍一郎に体を近づけられると、それだけで圧迫感を感じて、澄花はビクッとしてしまう。


「な、なにを……あっ……」


 あたたかい吐息と、そして柔らかい唇がそっと手のひらに触れる。


「なっ……えっ?」


(手のひらにキスした!?)


 頭が真っ白になる。

 そして龍一郎は澄花の手をうやうやしく両手で包みこむと、自らの口元に引き寄せ、囁いたのだ。


「Pain,pain,go away」


 それはまるで敬虔な祈りのようで……尊く、美しかった。

 澄花は自分がされていることも忘れて、目を伏せたままの龍一郎を見つめてしまった。

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