お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(睫毛長いんだ……それにぺいん、ぺいん……?――って)


「あっ」


 澄花は軽く声を上げた。


「もしかして、今のって“痛いの痛いの飛んでいけ”ってことですか?」


 手のひらに口づけられたときは驚いたが、この無表情でなにを考えているのかわからないこの男が、そんな子供のようなことを言うとは想像もしなかった。


(こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど……少し、ホッとした……かも)


 肩の力が抜けた澄花はクスクスと笑いながら、じっと龍一郎を見つめた。


「ビックリしましたけど、おかげで忘れられた気がします。ありがとう」


 その瞬間――。
 龍一郎はハッとしたように目を開けたかと思ったら、どこか困ったように微笑んだのだ。


「そんなふうに笑うんだな」
「え……?」
「だったらもっと……見たい」


 熱い視線を澄花に注いだまま、龍一郎は澄花に顔を近づける。


「君は何をされたら嬉しいんだ」


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