お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 生まれて初めて好きになった男の人が春樹で、どういうふうに愛されれば正解なのかなどわからなかった。ただ彼の側にいたいと願い、それを叶えてもらった。それだけで幸せだった。


(でも……欲しいなんて、初めて言われたわ)


 胸がドキドキと鼓動を刻む。
 ときめいているわけではない。戸惑っているのだ。


(私が欲しいなんて……意味が分からない――けれど)


 澄花はじっと龍一郎を見つめ返した後、


「――だったら、私をいくらで買ってくれますか?」


 思わずそんな言葉を口走っていた。

 自分に望みなどない。夢も未来もない。愛したいとも、愛されたいとも思わない。

 だが――澄花の心には、春樹と、春樹の両親がいる。
 自分にはなんの価値もないが、この男が自分を欲しいと思ってくれているのなら、最大限利用しない手はないのではないだろうか。

 彼はKATSURAGIの御曹司だ。

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